2010年7月現在、特定機能病院(高度な医療を提供する病床数400床以上の病院)を中心に、全国の1,391施設が、DPC(診断群分類包括評価)による医療費の定額支払い制度を導入している。これは、当初厚労省が目標とした1,000を超え、DPC対象病院の病床数が一般病床数の半数以上を占めることとなり、今後DPC病床が日本の急性期医療の主体となったことを意味する。
DPCによる定額支払い制度は、従来の出来高払いとは異なり、初めから診断名に関する診療報酬が決められているので、治療費(つまり病院にとっての原価)のかからない最適な方法で医師が医療行為にあたることにつながり、結果無駄な医療費が削られることが期待されている。また、同制度の特徴の一つに、DPCコード別に定められた入院期間を超えると、1日あたりの支払い額が減っていくことがある。在院日数が長くなると、それだけ病院にとって原価割れする可能性が高くなるという仕組みだ。患者にとっても、国家財政にとっても、医療費の総額が低く抑えられることは喜ばしいことだが、反面医療現場における過剰なコスト意識や、面倒見のよい病院が少なくなる可能性がある。事実、DPCを導入した病院における「平均在院日数」は年々短くなっており(下図)、定額支払い制度の目指す効果とも言えるが、同時に医療の質が担保されているかという評価が重要になっている。

図 DPC対象病院数とDPC対象病院における平均在院日数の推移
資料)中医協2008年度DPC調査結果最終報告
これと同時に、日本における入院および外来の患者数がともに、2002年頃から減少に転じ、病院数と病床数も2006年の9,005施設から、2010年には8,708施設へと確実に減少へ向かっている。このような中、病院が地域の中で勝ち残るためには、急性期病院か、亜急性期一般病院や回復期リハビリ等の専門機能病院か、慢性期病院か、自院の進むべき方向の選択と明確化が求められている。
一方、これからの患者においては、一般診療所(クリニック)とのかかわりを見直す必要がある。退院後の外来受診はクリニックが中心となり、定期健診は病院で行う。これまでは病院の専門医が担当していた経過観察をクリニックの総合医が診る。あるいは、自宅で診療が受けられる在宅医療サービスを利用する。終末期の看取りを専門で行うホスピス施設を利用するなど、これまで病院で請け負ってきた医療サービスの供給先が病院から地域へと急速に進んでいくことになり、新たな地域医療サービスの幕開けとなる。

リサーチャー。1965年生まれ。筑波大学大学院経営政策科学研究科卒。
旅行、娯楽、独立系コンサルタントを経て、現在ルーデンス・ラボLLC主宰。
専攻分野はマーケティング・サイエンス、事業開発など。